2008-02-01から1ヶ月間の記事一覧

亀山郁夫 『「カラマーゾフの兄弟」続編を空想する』

東外大の学長が同人誌を出すならこんな感じ、なんだろうか。序文によってメインであることが明示された第二部を残し、第一部のみで結局未完のままとなった『カラマーゾフの兄弟』のその第二部について、本文中の手がかり、ドストエフスキーのこれまでの手法…

機本伸司 『神様のパズル』

SF。主人公が理学部物理科の落ちこぼれ4回生で素論の実験系って時点で俺に合わない本だってのはわかってたんだけどさ。物理を専攻できるだけでどんだけ幸せか考えてみるべきだと思うよ特に素論なんか花形分野なんだからもう俺に謝れ。そんな私情も合わせて、…

桜庭一樹 『少女には向かない職業』

弓を引き絞るように悲痛な、少女の物語。この悩みも悲しみも痛みも中学2年生の少女でしか表せないけれどそれだけに凄絶。思春期の未熟さと殺人という結果の重大さの格差、しかも未熟な少女自身でその結果の重さは自覚しなければならないという更なる痛み。 …

清野静 『時載りリンネ! 1-2』

天真爛漫な、といった表現がよく似合うライトノベル。12歳、好奇心一杯の元気で真直ぐな美少女、それでいてどこかコケティッシュという言葉が似合うような、そんなヒロインのリンネ。そのリンネが望む「わくわくする大冒険がしたいな」の通りに、ストーリー…

佐々原史緒 『暴風ガールズファイト 2』

前巻で足りなかった部員確保から公式戦まで。12人だぜ、12人。んでストーリーも動くわりに、合宿風景なんかに字数を費やしてるから全体としてとても密度が濃い。筆力だなあ。練習風景や細かい日常に細かい描写を積み重ねて、それでやっとこ熱くもどこかまぼ…

高遠豹介 『藤堂家はカミガカリ』

軽妙な、というのか。神話ベースのアクションものなんだけど、コミカルに落とし続けるので全体的に雰囲気は軽い。そのコミカルな小ネタが結構レベル面白かったんだけどさ。その軽さとハートフルストーリー、期待するものを間違えなければ面白いと思う。 藤堂…

峰守ひろかず 『ほうかご百物語』

なんだかな。無難、という感じ。イタチさんかわいいよイタチさん、ではあるけれど。主人公がイタチさんをスケッチできない、という方向に設定の縛りを入れちゃったのが残念かなあ、って。あとは、日々の暮らしに根付いてる「妖怪物語」ならではの驚かせるよ…

瀬那和章 『under―異界ノスタルジア』

なんか『神様のメモ帳』に異界グロ要素を足したようなの。後半は全然違うけど、無力感みたいなものは若干通ずるものがあるかなと。こっちはアイテムの有無で力が決まるみたいなので、まあ純粋に帯で上遠野浩平のいう「これは覚悟の物語である。」という煽り…

古橋秀之 『ある日、爆弾がおちてきて』

「時間」をテーマにした短編集。どれも文章としてかなりレベルが高いので、一気に読んだあとの余韻が凄い。個人的に一番好きなのは一番シンプルに『おおきくなあれ』かなあ。まるで無駄がなく削ぎ落とされているのに説明くささがない爽やかなボーイ・ミーツ…

池田信夫 『ウェブは資本主義を超える』

blog本。ウェブはもちろん経済から電波関係の技術まわりや社会学などにわたってのエントリが多い。ご本人はわりとしっかり意見を持って表明なさる方なので、まあポジショントークとは言わんがもちろんある程度のバイアスをかけて読むべきなんだろうな。それ…

ドストエフスキー 『カラマーゾフの兄弟 5』

新潮訳でこないだ読んだばっかりだけど、忘れないうちに亀山郁夫の解題を読んでおこうと思って5巻だけ購入。とりあえずカラマーゾフの兄弟を読んでみたっていう人が、この本のどこが名作なのかっていうのを理解するために、いろんな注目すべき点を指摘してい…

中村九郎 『樹海人魚』

『アリフレロ』ではこの作者に完敗を喫してたので、比較的読みやすいと言われているこちらの方へ。確かにアレよりは解るけど、相変わらず論理は突き放し気味。この突き放された距離から進んでいく物語を眺めるのを楽しめばいいのかなと思った。これを読者と…

井上堅二 『バカとテストと召喚獣 1-3.5』

うわあ馬鹿なラノベだあ(褒め言葉)。馬鹿ばっかりを集めて誰もがテンポよくボケとツッコミをこなすから、かなりセンスのいいドタバタになってるんだけど、それに召喚獣システムっていう更に派手なドタバタ要素を加えたことで、もう至上の馬鹿ラノベになって…

ウィリアム・アイリッシュ 『幻の女』

ミステリ。あんまり読まないジャンルなので良し悪しはあんまりわかんないけど、何十年も前の作品にも関わらず都会的で瀟洒な書き口と、タイムリミットを強調する緊張感、それを一気にひっくり返すどんでん返し(パターン的にはこれしかないという展開ではある…

紅玉いづき 『MAMA』

よく考えてみると前作の『ミミズクと夜の王』とおなじことを書いてるような気がするけれど、でも何故か前作よりこっちの方が好きかなあ。なんでかなとちょっと考えてみるに、前作は純愛過ぎて意味わかんないってヒいちゃう部分がほんの少しだけあったんだけ…

爆笑問題+福岡伸一 『爆笑問題のニッポンの教養11 生物が生物である理由』

『生物と無生物のあいだ』の話を掻い摘むのかと思いきや、科学と宗教の違いを単なる言葉の違いとしてみるとか、エントロピーの話からの宇宙永劫回帰論などというメタ科学の話にも突っ込んでってって、ふうんという感じ。俺はこの「言葉の違い」ってのを公理…

君塚直隆 『ヴィクトリア女王』

1837年に18歳で即位、64年間も女王の座に君臨していたヴィクトリア女王の一生を書いた本。大英帝国最盛期だけあって外交に入れ込んでいく女王をエピソード中心に書いていくので、世界史を全然知らない俺でもわりと楽しめた。ただエピソード中心だとどうして…

荒川工 『にこは神様に○○される?』

ドタバタからしんみりに落とすエロゲを書かせりゃこの人に及ぶものはあんまりいない、という荒川工のラノベ。帯で煽られてるほどエロ路線ではなく、しっかり荒川工っぽい起伏のある内容になってます。ただもちろん立ち絵とかがあるわけではないので、ころこ…

カーレド・ホッセイニ 『君のためなら千回でも』

映画化、文庫化で邦題が媚びたな、と思ってたけど、まあ改題の必要があったならこのタイトルしかないか。アフガニスタンで暮らす男の子が育ってって、まあ結局アメリカに難民として行くんだけど、その人生の回顧録の形で進んでいく。イスラム教の話とか人種…

アクセル・ハッケ,ミヒャエル・ゾーヴァ 『ちいさなちいさな王様』

大人向けの絵本。話が示唆に満ちていて、でも押し付けがましいかというとそうでもない。素晴らしい挿絵というのは説得力を持つようになるんだなあ。空間と空気の創造。なんだかどうにもこうにも上手くいかないなあ、という人への癒しとしてお勧め。ボクにも…

佐々原史緒 『暴風ガールズファイト 1』

女子ラクロスを題材にしたスポ根もの。作者もかなりラクロスをしっかり取材したみたいで、それが千果のラクロス愛にも反映されてるんだけど、それでいてわかりやすくラクロスをあくまで「舞台」に落ち着かせてて、純粋にキャラの魅力に浸れるのがいい。とり…

中島義道 『カイン』

んー、世の中に息苦しさを感じている、でもそれは自分の「弱さ」が悪いんだよね、という風な考え方をしてしまう人に向けて、手紙形式で著者が自分の体験を踏まえて語りかける本。親の期待を捨てろとか、人に対して怒ることを覚えろとか、たしかにひきこもり…

小谷賢 『イギリスの情報外交』

1940-41年のイギリスの対日、対米情報外交について。東南アジアの植民地を巡るあたりで、出来るだけ南進してくる日本との戦争を避けよう、先延ばしにしようというイギリスが用いたインテリジェンス外交の話。どこまでが本当の話か知らんけど、システムとして…

イザヤ・ベンダサン, 山本七平 『中学生でもわかるアラブ史教科書』

こないだのハンドボールのいわゆる「中東の笛」ってのに対して俺が一番驚いたのは、おんなじルールの下で違う国同士が一緒にスポーツをやる、ということが普遍的な意味を持つわけではない、ということだったのね。そらまあオリンピックだって国威掲揚の意味…

支倉凍砂 『狼と香辛料 7』

本編と関係ない中編と、時系列的には1,2巻終了時くらいの短編が2つで、まあアニメから入った人向けな部分も多少あるのかな、そんな番外編。何よりもまずホロ視点の「狼と琥珀色の憂鬱」がいいなあ。『狼と香辛料』の最大の魅力、ロレンスとホロの会話に焦点…

瀬尾つかさ 『クジラのソラ 04』

完結巻。宇宙規模での戦いと自宅、宇宙最強レベルの冬湖と(一応)凡人の雫、みたいなインフレの対比とでもいうのか、でっかく広げた風呂敷を畳むいい完結編で、シリーズの魅力であるスポ根方面でも熱くていい感じだった。地球のみんなオラに元気をわけてくれ…

2007後期 一般教養科目成績

このタグ使うのは久しぶりね。たまたまkulasis見たら出てたので転載。 科目 評価 愚痴 現代文明総論B 良 テストはかなりの部分をオリジナルで記述書いたので、評価されたのは結構満足。影響力の大きな授業であった。 哲学基礎論2 不可(笑) 出席を重視してた…

帰省

ただいま帰省中です。いや帰省中と言っても、お前はいつまで経っても親の脛をかじって母親の大腿骨を白日の下に晒すことで際限なく趣味物を買い集め、挙句の果てには下宿までさせてもらって大学に行かせてもらってんのにお勉強を宇宙の果てまで高く高く放り…

杉井光 『神様のメモ帳 1-2』

NEETの生き様全肯定。といっても原義、特にEmploymentの部分を重視した感じで、それぞれのキャラクターが一芸持ってる人ばっかりで、俗にいう無気力なニートとは違う。その周りのみんなが一芸持っている中での、主人公の無芸っぷりと無力感はなかなか応える…

杉井光 『さよならピアノソナタ』

キャラ立てもあざとくて、タイトルもイラストも狙いすぎ。だが、それを1つに纏め上げる構成力が凄い。何度も見せ場を作りながら、先輩の妄言(恋と革命だ)まで拾い上げて伏線を回収して1つの旋律にしてしまうのは、ありきたりかもしれないけれど美しいと思っ…