中島義道 『カイン』

んー、世の中に息苦しさを感じている、でもそれは自分の「弱さ」が悪いんだよね、という風な考え方をしてしまう人に向けて、手紙形式で著者が自分の体験を踏まえて語りかける本。親の期待を捨てろとか、人に対して怒ることを覚えろとか、たしかにひきこもりの経験をもつという著者だけあって、俺の実感としてかなり「正しい」ことを言ってる。ただねー、著者も言ってるように、それで強い人間になるってのはかなり虚しいもんだと思うんだよね。間柄的存在、という言葉ではないけれど、他者を物質化して何が人間かね、と思う。あと気に食わないというほどのもんでもないけど、なんというのかな、どっかで人間はアウトプットの場が必要なんだと思うよ。これは文筆業で飯食ってる著者に対する俺の妬みなのかもしれないけど、そういうのを吐き出せる場所を持ってる人じゃないとなかなか「強く」はあれないような気がするけどなあ。
カイン―自分の「弱さ」に悩むきみへ (新潮文庫)