イザヤ・ベンダサン, 山本七平 『中学生でもわかるアラブ史教科書』

こないだのハンドボールのいわゆる「中東の笛」ってのに対して俺が一番驚いたのは、おんなじルールの下で違う国同士が一緒にスポーツをやる、ということが普遍的な意味を持つわけではない、ということだったのね。そらまあオリンピックだって国威掲揚の意味が強いというのも知っているけどさ、それでもね。
まあそんなわけでこの本は、著者が書中でいっているように、歴史を学ぶ前提としての「交通整理」の部分が大きい。それは例えば日本人のしがちな歴史の誤解の仕方だとか、彼らの価値観の基盤などの説明。アラブ周辺以外の歴史に殆ど触れていないなど、あくまで前提知識の補完という性質を超えない本。もちろん知識としてそういうことを知っておくのも大事だし、それ以外にも、自分とはまったく違うルールで生きている人たちがいる、という当たり前のことを再確認できる本でもあると思った。

中学生でもわかるアラブ史教科書―日本人のための中東世界入門 (ノンセレクト)