亀山郁夫 『「カラマーゾフの兄弟」続編を空想する』

東外大の学長が同人誌を出すならこんな感じ、なんだろうか。序文によってメインであることが明示された第二部を残し、第一部のみで結局未完のままとなった『カラマーゾフの兄弟』のその第二部について、本文中の手がかり、ドストエフスキーのこれまでの手法からの類推や当時の妻などの証言などを重視し研究としての態度を保ちながら、最後は翻訳者としての空想の翼を羽ばたかせて、実際にプロットを作っちゃおうというところまでいった意欲作。大好きな原作をリスペクトそして妄想、というのは同人誌の鑑ではないかね。実際その中身は結構説得力がある物語になっているかと。普通に本編を読むだけでは違和感が残るところを伏線として回収したりと、もしこの通りに完成してたら『カラマーゾフの兄弟』は今よりもんのすごい影響力を持っちゃってたんだろうなと思わせるような。個人的にはアリョーシャには死亡フラグ立ってると思うけど。
『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する (光文社新書)