丸島儀一 『キヤノン特許部隊』

 1950、60年代にそれまでカメラメーカーだったキヤノンコピー機に参入する時に、それまで技術的に独占していたゼロックスの特許をかいくぐるのに活躍した著者、まあこの事例ってのが知財分野ではかなり有名な話らしくて、その後は特許協会の理事長として国の知財戦略の会議になんかに呼ばれたりしているらしい、そんな筆者の特許観など。その、一番スリリングなはずのコピー機云々のところはかなりあっさり(その後の本の半分くらいは、特許の基礎知識みたいなことをインタビュー形式でやっていて、どっちかというと構成を担当したライターさん頑張ったなと思った)で、なんというか、特許的にはこういう技術を使わないで作れば良さそうというのを分析して開発の方に伝えて、作ったら作れたみたいな書き方で終わってしまっている。600個以上の特許文書を原文で読んだとか、苦労話もあるんだけれど。そんな筆者の経歴もあって、メーカーの知財部門にあってはその開発の現場に近付いている("源流に入る")ことを是とし、他企業とのライセンス契約も、そこで銭を稼ぐんじゃなくて、メーカーの事業全体として利益が出るようにやるんだよ、というような話が続く。個人的には、弁理士事務所で特許を扱うってのがどういうことなのか興味があった(というか、そういう面から参考になる本を伺ったのである)ので、そこはちょっとギャップがあったかも。ないのかも知れない。後半の、国としての特許戦略提言の部分は、ちょっと10年以上前の本なので保留。

キヤノン特許部隊 (光文社新書)

キヤノン特許部隊 (光文社新書)