殺されたいという一心で駆け上がった戦場にて迷子。[v1] (Temporary entry)

 いつだったかね。水曜の夜かな。まあその日もだらだら、もうすぐ出すよって言われてる論文の参考文献を読んでて、まあ水曜の深夜30時に寝て、で出来れば木曜の朝8時に起きられれば午前の授業に間に合うかな、くらいの気持ちでいたら起きた時点で9時半なんだ。
 朝風呂をシャワーで済ませれば学校に……行ける……。とか思いながら30分くらいぼーっとしてたら遅刻確定、それでも背中から生えてる触手以外の身体を一切動かす気がしない中で、まずは電話がかかってくるんだ。触手を伸ばして電話を取ってみると、今行ってる歯医者からだと。
 あのねえ、こないだ親知らずを2本同時に抜いたって話をしたと思いますけど、それって、他にもいっぱい虫歯があってどうしていいかわかんないから、とりあえず痛みそうなやつ、ってことで親知らずに手を付けたのであって、まあ虫歯がいっぱいあるんですけど、それでいて、前に行った時にとった次の予約が、混み合ってるだかなんだかで1ヶ月以上飛んで、1月中旬だったんだよ。しかも次回は歯磨き指導ですとか言って。
 それってさ、次に行って「歯ブラシはペンを持つように握りましょう。肛門に挿入する時は人肌に温めてからよ」なんて言われて、そんでその時にとる次回の予約がまた1ヶ月とか飛んで、そんで初めて虫歯の治療が始まるんだったら、もう歯医者側からの公認で「俺の虫歯はとにかくいっぱいあるし酷いけど、ここまできたら1ヶ月や2ヶ月放置しても全然問題ない」っていうお墨付きをもらったようなもんじゃないですか。1ヶ月や2ヶ月放置しても全然問題ないなら100年放置しても問題は無いだろ。俺は宇宙皇帝エンペラー王として向こう7億年はこの世界を支配するけど、それにしたってもう60年くらいしたらこの肉体は捨てて、大気みたいのにふわふわ浮かぶ超存在みたいのになるから、別にもう歯医者とかいいんじゃねーかと思って。俺の中でもう歯医者ブームが終わりかけてたんだよね。
 そしたら木曜だから12月の16日ね、歯医者から電話が来て、キャンセルが出たから夕方くらいに来いみたいな話になってさ。そうこうしてる内にようやく目が醒めてきて、ようやく風呂を湧かして入ったりしてるんだ。まあ風呂に入ってる時点で、さっき行こうとしてた午前中の授業なんか終わってますよ。


 その後も、大家さんに渡す用のお歳暮が届いたけど、うちに冷凍ものの保管場所がないから伝票だけ剥がしてそのまま持ってく、みたいなかなり慌ただしい日で、昼過ぎにようやく、そういやメール見てねーなーっつって。昨日出会い系に尻穴を晒してパパを募集しておいたけど、歯ブラシプレイOKな人からメール来てないかなーっつって。
 まあそれは来てなかったんだけど、その、いま一緒に研究してる教員の人からメールが来てて。なんか、俺らが今出そうとしている論文とすげえ被ってる論文が今日出てて、俺らも今日中に出さないと駄目っぽいみたいなことが書いてあんだよ。取り急ぎその被ってる論文を印刷してみると、まあ見覚えのある式がいっぱい出てきてるわけ。
 えー、で、研究者のローカルルールなのか知らんけど、かなり被ってる論文でも、1日遅れくらいなら、文末に「被ってる論文出ちゃった。てへっ」みたいなことを書いて、あと著者同士で連絡をとったりしとけばまあ良し、みたいなことがあるらしいんだ。
 そもそも俺らの論文の何待ちだったかというと、ほぼもう中身は出来てて、あとは俺が著者の一員として胸張って名前乗っける程度には理解しろっていうのでここ1週間くらい待たせてる(論文にして5,6日間で9本くらいは読んでて、直前に風呂に入りながら読み終わった論文で一段落だったはず)わけですから、そんなん先週の金曜だかに著者から俺の名前を抜いてacknowledgementんとこに「cmizunaくん:帰宅後すぐに肛門に挿入できるよう歯ブラシを懐で暖めといてくれてありがとう」なんて書いといてくれればそれで良かったわけで、あーもー死にたいと。死にたい死にたい言いながら急いで学校に行くんだ。


 息を切らせて行くには行ったし、教員もめっちゃ焦ってはいるんだけど、別にここにいたって特にすることはないんだよね。論文ってネット投稿で、しかも1日ごとに集計されるから、1分1秒を焦ることはないんだ。その、被ってた人の論文を受けて、まあそれこそそれに言及したり、あとは直前の版から、俺とか他のもう1人からのコメントを反映させたりとかもし終わってたし。
「cmizunaくん、何かある?」
「あー、と、最後までここの論理がよくわからんかったです」
なんて普通に、そのうちしようと思ってた質問をしたりしてるし。
「あ、ここね。この話、cmizunaくんは知らないと思った」
「そっすか (ただのいじわるだった!)」
で、まあそんな話も一段落して、もうすることがないから投稿しちゃおうぜなんつって。教員のPC操作を後ろから覗き込んで、投稿される様子を見るんだね。感想、うーん、まあ、普通。そりゃそうだ。たかがTeXファイルを送信するだけで楽しいことは起きない。これが実際に投稿が反映されたあとだと、被引用件数が増えていくごとに脱衣ブロック崩しの要領でエロ画像がどんどん見えるようになっていくんですけど。500+なんかになると凄いらしいぞ! でも論文投稿サイトは海外だからなー。洋物興味無いんすわ。やっぱ歯ブラシは国産に限るよなー。
 結果的に、正午過ぎくらいに学校に行って、投稿が終わって2時くらい、まあ夕方の歯医者とかに全然間に合うのね。ほんとどさくさ感が凄い。
 その投稿の修正が翌朝6時まで受け付けてるからそれまで起きてようかなとか思ったんだけど、普通に眠いし寝た。エロゲもやった。『星メモ』はわりとお勧め度高いぞ。起きてからも、自分の論文読んで修正箇所を探すどころか、全然関係ない分野の論文読んで無責任に「ふわーすごいなー」とか思ってたりですね。「一読した限りでは、普段無視してる部分を考慮に入れて、高次補正みたいに効くんだと思ったけど、もしかして完全に物理として違うものを見てるつもりなのか……?」とか一人で言ってた。
 で、金曜。実際に投稿が反映されたのを確認してから学校に行くわけだ。まあ、特に何も変わったことは無いよな。そもそも、俺の処女論文が出たことに誰も気付いてないし。しょうがないから同級生との会話の中でかなり強引に、
「ああ、そういや今朝出ましたよ、俺の論文」
「へーすごいなー。読みたいけどわからんやろうしな」
みたいな会話に持ち込みましたけど、まあそれだけだな。他の、業務連絡の方が食い付きが良かった。俺の論文なんかより、来週のミーティングの場所変更の方が大事だよね。うーん。あ、そういや、日曜にエロゲ買いに行ったついでに買った、DSのカードヒーローがわりと面白いです。たぶん俺の論文よりも面白いです。そんなことないよ!