ロレンス 『チャタレイ夫人の恋人』

 性愛を描いた傑作。表現規制だとか文学裁判だとかで名前が知られている一作であったりもするけれど、イメージほどそういう描写が多いわけではない。中盤以降やや目立つようになるけど、それでも割合的には精々が、ちょっとエロ濃いめのエロゲくらいの分量。まあでもそのぐらいはあるし、恥ずかしげもなく肉体的な官能(そーゆーえろりんこだけでなく、クリフォードの肉体的な不随とか、それでいて機能としての子供を欲しがるとかも含めて)を堂々と絡めて、真の恋愛、真の生みたいなのに迫っていくという趣向は、個人的なことを言えば、そういう他の人が肉体的ないし本能的にやってる"恋愛"なんてものがいまいちぴんと来てない自分としては、そういうのをわりとちゃんと説明してくれてて、頭でっかちな俺にとって有難い。イングランドの田舎描写の派手ではない美しさも、淡々と肉欲を通じて愛情の形を確かめ合う2人と相まって。これは面白かった。

完訳チャタレイ夫人の恋人 (新潮文庫)

完訳チャタレイ夫人の恋人 (新潮文庫)