2014-09-15から1日間の記事一覧

桜庭一樹 『少女七竈と七人の可愛そうな大人』

淫乱な母親から生まれた美しいかんばせを持つ少女の、その美しさの持て余し方、つまり、生まれた北国の小さい街から出られない幼さとか、同じ美しさを持つ幼馴染みの男の子との、普通の人たちとはリズムが違う会話とか、その拙さが、上手く歩けない幼児を見…

アストリッド・リンドレーン『長くつ下のピッピ』

学はないけど剛力で豪胆な1人暮らしの少女が主人公の有名な童話。自由気ままなピッピが女の子の憧れになってきた、そうな。そういうカウンターとして読むならいいけど、普通に読むと非常識っぷりにかなり引く。自由なのも大切だけど、自由に価値を与えるのは…

夢野久作 『いなか、の、じけん』

九州に住んでいた作家の、田舎に起きたいまいち間抜けな事件(殺人とか事故死とかあるけど)の新聞記事に取材した、という体の短篇集。田舎という"粗野"の粗さが間抜けに見えるんだろうな。いなか、の、じけん作者: 夢野久作発売日: 2012/10/01メディア: Kindl…

紅玉いづき 『青春離婚』

アンソロの一篇だった『青春離婚』が、中篇を2つ加えてやっと独立して刊行である。その2つも、それぞれtwitterのbotとソーシャルゲームを通じた少年少女の恋物語で、なんというか、小道具が進化して、環境だって変わって先でも、こういう物語が今のものとし…

三田誠,虚淵玄,奈須きのこ,紅玉いづき,しまどりる,成田良悟, 小太刀右京 『レッドドラゴン 6下』

ついに完結。まあこの最終局面まで収束(一番確率の高いものとして用意されてはいたでしょう)してしまって、しかもボスデザイン的に余計なことせずに殴るしかないという状況に至っては、それぞれの行動原理の一番大事なところだけ見せていくしかない、という…

杉井光 『東池袋ストレイキャッツ』

不登校男子高校生が路上ライブを始める、杉井光のいつものといえばいつものだし、曲の古さは対象年齢を上げてんだかなんだか。東池袋ストレイキャッツ (電撃文庫)作者: 杉井光,くろでこ出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス発売日: 2014/06…

一肇 『フェノメノ 伍』

クライマックス前、過去の回想へ。ホラーでありミステリでありサスペンスであり。こっからどんだけ酷くもどんだけ優しくも幕が引けそうだけど、それは作者を信頼するしかないんだろうな。フェノメノ 伍 ナニモナイ人間 (星海社FICTIONS)作者: 一肇,安倍吉俊…

海猫沢めろん 『左巻キ式ラストリゾート』

2004年に出た18禁小説の再版。安易で露悪的な暴力混じりのエロを、メタフィクション特有の気軽さでまとめる。一時代を作ったエロゲというフォーマットの安易さを糾弾しながら、DTPを駆使して本というフォーマットの自由さを模索した、という風に「これは、ゼ…

夢野久作 『ドグラ・マグラ』

読むと気が狂うとか、日本探偵小説三大奇書なんて言われる一作。自分自身を対象として取り扱う際に入れ子構造を使ってメタ的にいかなくちゃいけない、という意味では『ゲーデル、エッシャー、バッハ』とかに近いような気もするが。あれも長いしな。目が醒め…

内田弘樹 『艦隊これくしょん −艦これ− 鶴翼の絆 2』

アイアンボトムの消耗戦、そして戦うことを拒否する大和を前線に引っ張り出してくる物語。それぞれのノベライズシリーズで設定が違う中、船としての記憶を持ちながら生まれ変わってくるというこのシリーズ、それにそれを書くだけの現実の軍事知識を持ってる…

川岸殴魚 『人生 第8章』

アニメ放映中のギャグラノベ。この作者の前のシリーズから読んでてわりと好きなんだけど、そういやアニメから入った人の感想で「人の人生相談を肴に美少女達といちゃこらハーレムしてる」とかいうのがあって、「え、そんな言い方も出来んの……」と思ったんだ…

町山智浩 『教科書に載ってないUSA語録』

雑誌連載されていたコラム集。政治家やハリウッド俳優の発言を取り上げて、米国内事情を取り上げる。2009〜2012くらいの連載で、話題はちょっと古めの切り口ながら、どうしようもない品のなさと、それを必死で取り繕っているかのようなアメリカ社会を軽めに…

朱門優 『修理屋さん家の破壊神』

触れたものを壊してしまうヒロインと、ものが壊れていることに我慢ならずに修理してしまう主人公の現代学園もの。設定的には続きそうだけど、最後でもう一段階メタに飛ばすのは、単巻ものならいいけど、という感じだが。そういう"構造"を作るのは相変わらず…

田中ロミオ 『人類は衰退しました 9』

完結。前巻に引き続き、わたし月へ、そしてその章のタイトルが『妖精さんの、ちきゅう』という。そしてまあ、わりと寄り道なしにこのシリーズ全体のネタばらしへ。用意されていたのであろう結末だけあって、シリーズを読み返したくなること必至。人類は衰退…

竹井10日 『彼女がフラグをおられたら 9,10』

第1章完、第2部へ。第1部は練習、というよりデバッグであった。やり直しという1つ上の目線がヒロイズムを煽る。彼女がフラグをおられたら(9) 世界の真理など、私一人で充分だ (講談社ラノベ文庫)作者: 竹井10日出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/06/06…

竹井10日 『10歳の保健体育 7』

10歳にご当地アイドルやらせる話。小学生チームが勢揃いだが、何故か面白いのは翠蓮父娘との半笑い絡みである。10歳の保健体育: 7 (一迅社文庫)作者: 竹井 10日出版社/メーカー: 一迅社発売日: 2014/06/20メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る

森田季節 『不戦無敵の影殺師 2』

現代(世知辛い人気商売業界)異能バトルもの第2弾。お笑い芸人とかにも共通しそうな話だけど、事務所同士の力関係が出てこない分だけマシなのでは……。つらい。不戦無敵の影殺師2 ガガガ文庫 不戦無敵の影殺師作者: 森田季節出版社/メーカー: 小学館発売日: 20…

森田季節 『烈風の魔札使と召喚戦争 4』

おしまい。なんだろうな、1冊1冊で山場とオチを用意しなくちゃいけないとかハーレム体質とか、続き物ラノベというフレームの必要性に疑問を感じ続けたのは、『Wizard's Soul』辺りと比べちゃってるからなのかしら。文庫としての読み応えとして期待されるもの…

築地俊彦 『艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!3』

何もないリンガ泊地に飛ばされた第14駆逐艦隊、そこで待つ老提督と秘書艦叢雲(なんたってこの2人の老夫婦然とした雰囲気が良い)、それにあきつ丸、という話。個人的にはちょうど秋イベで初期秘書艦叢雲を沈めかけたとこだったので、作中のボロボロの叢雲を見…

米原万里 『心臓に毛が生えている理由』

2000年前後に新聞や雑誌に載せていた短いエッセイを集めたもの。ロシア語の通訳、特に同時通訳者として国際会議を受け持ったりするのだから、そこには機転と知識とそして何より度胸(毛の生えた心臓)が要るわけで、それをバックグラウンドに軽めの切り口で時…