夢野久作 『ドグラ・マグラ』

 読むと気が狂うとか、日本探偵小説三大奇書なんて言われる一作。自分自身を対象として取り扱う際に入れ子構造を使ってメタ的にいかなくちゃいけない、という意味では『ゲーデルエッシャー、バッハ』とかに近いような気もするが。あれも長いしな。目が醒めると記憶を失っていた語り部の"私"が目覚めたのは精神病院の個室の中で、から一応の物語の本線が始まりながら、当時の精神病患者の取り扱いの酷さをチャカポコチャカポコ歌ってみたりと、色んな入れ子構造が入ってみたり、一旦登場人物によって教わった真相がすぐに覆されたりと、つぎつぎに視点がブラされる中で、自分の精神の成り立ちを扱うという不安定さが、戦前の片仮名交じりの文体と相まって。

ドグラ・マグラ

ドグラ・マグラ