戸田山和久 『科学哲学の冒険』

 科学哲学の入門書。優しい口調で、科学的手法の正しさの根拠を問うための色んな議論を概観する。個人的にこれまで物理やってたのは"超弦理論"って言葉に興味があっただけで世界の成り立ちはたいしてどうでもよい、更に言えばその超弦理論が現実になにか反証可能性のある予言を出すには当分遠いし、それまではルールに従ってゲームを進めようとしか思わないっていうのがあって、別になんか研究が進んだ帰り道に「この世界のこの秘密を知ってるのは自分だけなのだ」なんて感慨に襲われたことは一度もない(そんなことより走って帰らないとウンコが漏れる)ので、周りの物理屋さんがナイーブに実在論を信じてたり、その正しさを楽しそうに信じてたりすんのを見て「でも嘘かもじゃん……」って思ってた、その科学の楽しさを信じ切れない自分にある意味での後ろめたさみたいのが相当あって、まあこれが出来るだけ物理の外に視野を持ちたいっていう俺のスタンスになって、それを咎められて結果物理をやめた一因になったりしたわけだけど、まあ世の中にはそこの正しさを疑ってくれてる人がちゃんといる、ということにはかなり安心する。

科学哲学の冒険 サイエンスの目的と方法をさぐる (NHKブックス)

科学哲学の冒険 サイエンスの目的と方法をさぐる (NHKブックス)