ゲイブリエル・ウォーカー 『命がけで南極に住んでみた』

 化学を修めた経験もあるイギリスの女性ジャーナリストが、南極大陸の滞在経験を記す。もちろん地理的にも物資的にも極限的に隔離されている中、南極条約があって、今南極で出来ることって科学研究くらいしかないという、もう純粋な学術的好奇心をときめかせるしかやることのない中(そしてある種の極限性は科学の恰好の舞台なのである)で、南極大陸のあちこちにある研究施設のそれぞれの訪問、そこで研究してる人とのインタビューを、本当に学術的好奇心たっぷりに語る。時々思い出したように、南極の天候の過酷さとか混じるんだけど、それがなければ完全に研究に熱中してしまう。南極と言えばのエンペラーペンギンとかの生き物の話や、俺のやってることにやや近いCMB(宇宙マなんとか波背景放射)の話とかもあるけれど、特に著者の興味のあるところ、あるいは南極の氷がダイナミックに語るところはやはり地球温暖化問題かな。そこも、科学の見識ある著者らしく、観測結果とそこから推論出来る仮説までは書くけどそこに決め込まない、科学的な慎重さと距離で書いてくれるので、読んでてしっくりくる。なんか装丁的なとこの違和感としては、過去の冒険家の手記とか探検隊の記録とか混じるんだけど、そこの引用部分の終わりの部分が分かりにくくて、「あ、いつの間にか著者の視点に戻ってる」みたいなことが多々あったりしてちょっとアレ。

命がけで南極に住んでみた

命がけで南極に住んでみた