武者小路実篤 『若き日の思い出』

 戦中あたりに書かれた、老小説家が昔を回想する形で書かれる小説。恋愛の初期構図とかは『友情』『愛と死』と同じなんだけど、この作品では何の起伏のない物語の末に普通に結ばれる。いや、本当に何の起伏もないので、武者小路実篤ひいては白樺派を誹って言われる、「浮世離れした」とか「楽観的すぎる」やら「純粋求めすぎ」なんて言葉が似合う部分が目立つ。まあここまで来ると良くも悪くもって感じにはなるけど。主人公の最初のうじうじした感じから、全てが都合良くいく筋、そしてそれに絡めて語られる武者小路実篤の思う「人のあるべき姿」の説教臭さまで、気持ちが悪いと言えば気持ちが悪い。

若き日の思い出 (1966年) (旺文社文庫)

若き日の思い出 (1966年) (旺文社文庫)