村井吉敬 『エビと日本人』

 エビという食材が東南アジアの辺りで獲れてから日本へ流通するまでの過程の取材を通して、主にいわゆる第三世界の暮らしにせまった、20年前くらいに書かれた本。わりと名著としての誉れも高く、なんなら数年前に知識のアップデートも含めた『エビと日本人 2』が出ているほど。ではこの1が出た時代はどんな時代だったかというと、まあバブル真っ盛りの頃で、かつて高級食材だったエビが、輸入自由化してから物凄い勢いで大衆化しだした時代だったわけですな。その言わばエビ激動の時代に、直接エビ漁をしてる人達や養殖池で育ててる人達などのところに行って見てきた話など、わりと実地観察多めの本。まあ若干その点、安い現地価格でこき使われてる人達に感情移入してて論が偏ってる面もあるかな。エビの生態的な分類やら性質やら、それを利用した漁の方法など、まあ変な知識は増える。

エビと日本人 (岩波新書)

エビと日本人 (岩波新書)