谷崎潤一郎 『文章読本』

 言語の限界を踏まえながら、それでも、ものを伝えることを第一義に文章を書く為に、日本語の特徴を主に西洋との対立で浮かび上がらせ、その上で気をつけなければならないことを書いた本。著者的にはそこから源氏の訳に向かっていくわけですけど。
 中身としては特に、実用性の極みと芸術性の極みを同じところに置き、わかりやすく伝えることに尽くしているというところは、実際それをやっておきながら本当に美しい日本語を書くこの著者だからこその説得力ではありますな。基本的にはそんな今日明日役に立つtipsとかではなく、こういうところに気を遣いなさいよということでしかないんだけど、その気のまわりっぷりは、文章と共に生きてる人が書いてんだなという感じがして、まあ読後には気が引き締まりますな。気。

文章読本 (中公文庫)

文章読本 (中公文庫)