カポーティ 『誕生日の子どもたち』

村上春樹訳。6篇入り。表題作と『無頭の鷹』以外は、作者自身の子供時代を背景とした、田舎に住む少年が主人公の小説。そこでは無垢というものが少年の心情として綴られていくんだけど、もちろん書いている作者はその無垢的要素を残しながらも結局はその田舎を去ったわけで、やはり作中でも単純なそのイノセンスだけでなく、それがもつ裏側の残酷さ(あれ、随分陳腐な言葉になったな)などの暗い部分を主題に書いている作品もある。この作品を選んだ訳者に引っ張られる形になるけど(というかほぼ巻末の訳者解説の焼き直しだ)、その視点から見ると表題作は、自分より年下の子供たちの世界が持つ"無垢"の世界とその不吉さの暗示で、それを語る一人称のどこか苦しそうで哀しそうな語り口が印象的だし、『無頭の鷹』は心象風景が多くてよくわからんかったけど、既に切り捨てた無垢の象徴に追い縋られてそれを改めて切り捨てる苦しさを書いているように思える。

誕生日の子どもたち

誕生日の子どもたち