『BIUTIFUL』

 スペインの下層社会で、不法入国してる中国移民の人材斡旋や、アフリカ人の海賊版バッグ販売について警察に口を利いたりなんていう商売で、子供2人と糊口をしのいでいる男が、前立腺癌で余命2ヶ月を告げられる話。同時に、別居している双極性障害持ちの嫁の調子は悪化するから子供も預けられなくなる、アフリカ人の方は麻薬の密売に手を染めて強制送還を食らう、中国人の方は大きな事故が起きて、なんてのっぴきならない状況でのたうちまわる男が描かれる。特段説明もなく、この男は死者の魂の声を聴ける存在であるという設定が出てくるんだけど、それを殊更に使うわけではなく、その男の死生観の1つ、死ぬということのその男にとってのリアリズムの強調にしかなってないのがクール。この男が抑制の効いた静かで迫力のある演技で、"下層"であるが故の地に足がついたリアルな生き様と死に様、もう外部から次々と、それどうしろっていうんだろ的な問題が降りかかってきても、覚悟を決めて静かに色々な人を助けようとするし、自分の子供にはしっかり残すものを残そうとあがく。なんたってこの映画、序盤からカットとカットの継ぎ目に映される画面がちょうかっこいい。中盤以降はそれが直接場面展開になるので、その余韻と次の場面とのジョイントの説得力、推進力がものすごい。ちょうかっこよくてかなり好きな映画だった。

BIUTIFUL ビューティフル [DVD]

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