キム・ステレルニー, ポール・E.・グリフィス 『セックス・アンド・デス』

 生物哲学の色々なトピックを取り上げて、今まで(15年前)の議論を解説する本。抄訳だけど、足りない部分(80Pくらい)もpdfでwebに揚げられてるので実質的には全訳。『利己的な遺伝子』あたりの主張を背景にして、本当に親から子に受け継がれる単位が遺伝子なのか、遺伝子ってDNA(の一部)なのか、みたいな自己複製子と相互作用子の話、それから生物の種って実在する単位なのかなど、興味深いトピックが並ぶ。これで突然道端でエロいお姉さんに「キミの遺伝子が欲しいの……」って言われても「発生システム理論(DST)って知ってます?」と聞き返すなど、冷静に対処することができるようになる。科学哲学自体あんまり囓ったことないけど、物理とかで扱う科学哲学に比べると、ちょっと広めな意味での問題の立て方というところを議論している印象で、まだ扱う問題が個別具体的な問題に即してるぶん、まだ(将来的には)科学の範疇でなんとか出来る余地がありそうだなあとは思うかな。「生物」という括りがまだ広すぎ(て一般的なことが言えないように見え)るようにも思える本。

セックス・アンド・デス―生物学の哲学への招待

セックス・アンド・デス―生物学の哲学への招待

  • 作者: キムステレルニー,ポール・E.グリフィス,松本俊吉,Kim Sterelny,Paul E. Griffiths,太田紘史,大塚淳,田中泉吏,中尾央,西村正秀
  • 出版社/メーカー: 春秋社
  • 発売日: 2009/07/01
  • メディア: 単行本
  • 購入: 6人 クリック: 178回
  • この商品を含むブログ (16件) を見る