『永遠の人』

 1937年の熊本の田舎に、戦地で負傷して戻ってきた地主の息子が、他に恋人のいる小作人の娘を手篭めにして無理やり結婚してからの、数世代数十年にわたるその夫婦を描いた作品。一つ過去の許せないことを秘めながら仮面夫婦を続けていく妻側の頑なさと、最初に過ちを犯した自覚と負傷の残り続ける障碍でいろいろ思い通りにいっていない苛立ちを募らせる夫、そのぎくしゃくが田舎のネットワークで倍増されて呪いを被る子供たち、その表面下に潜んだ憎み合いでそれぞれが本人たちの言を借りるところの「一生を台無し」にしながらも、表面的には家族を成立させていって、最終的に和解とも言えぬような和解にたどりつく。こらえながらも日常を淡々と営む妻に感情移入するところ大であったんだけれど、その表面から隠しているつもりで全然隠し切れていない態度が、周りの人をどんどん不幸にしていく様子、夫の眼がどんどん死んでいく様子、「ああ……こうやっても、人を間接的に不幸にすることはできるのだ……」と思うと、なんかわりと身につまされるというか。個人的に思うことがあるときに、一応やるべきことだけやって文句を言わせない、慇懃無礼ともちょっと違うんだけど、っていう態度をとることが多いだけに、ああ、俺のああいう態度は人を殺すのだ……と思うと、まあそうだよな……って思うね。

木下惠介生誕100年「永遠の人」 [DVD]

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