オリバー・サックス 『妻を帽子とまちがえた男』

 脳疾患、特に右半球の疾患によって、幻肢や失認などの不思議な"感覚"に陥ってしまった臨床例を、30年くらい前の臨床医がエピソード的に語る。まあ時代的なこともあって、外からでは何が起こってるのかが分かりにくい症状に苦しんでる(苦しんでない人もいるが)人にちゃんと寄り添って理解をする試みをするお医者さん、その目から見た1人の人間としての患者、というだけでわりと心暖まるお話になってしまう。その辺は、似た症例を扱っているものの、科学者的な視点で何が起こってるかを患者と一緒に実験しながら解き明かす様が面白い『脳のなかの幽霊』とは真逆のアプローチと言えるような気がするが。

妻を帽子とまちがえた男 (サックス・コレクション)

妻を帽子とまちがえた男 (サックス・コレクション)