下條信輔 『サブリミナル・マインド』

 東大でやってた教養の授業をまとめた、20年くらい前の、認知的不協和などを題材にした本。自分の感情、好き嫌い、そしてそれに基づく自由な行動決定、という当たり前の行動プロセスを覆すように、感情や好き嫌いが外部的な要因とかでたやすくねじ曲げられてしまうこと(それに自分で気が付いていないこと)、どうやら行動が先にあってそれに追従して認知があるらしいということなど、直感に反した実験結果をまとめている。まあ、どのくらい直感に反しているかというと、ショッキングすぎて有名な実験になったせいで、出版後20年のうちに大体どっかで聞いたことある話になっちゃってるくらい、だけど。最後の章では、それを人間観の話へ広げて、法学や哲学で尊重されている自由意思の存在を揺るがす。まあ、自分の感情とか意思決定に自信がある人にはショックだろうけど。個人的には、昔からあんまりそこを信用していないっつうか、この著者がこの本より後に書いた本とか、あと有名どこでは『脳のなかの幽霊』とか最近読んで知った話も多かったし、という感じ。

サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ (中公新書)

サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ (中公新書)