笠原嘉 『軽症うつ病』

 17年前に書かれた、精神科医によるうつ病についての考察。前に読んだこの人の本もそうだったけれど、筆致がとても丁寧で、人を信頼させる何かがある文章を書く人だと思う。中身は、自分の治療経験を基に、症状や原因の大別、治療経過なんかを説明していく。やっぱりちょっと前だけあって、わりと経験則に依っているというか、最近のDSMなんかに沿った鬱病の本ほどシステマティックではないんだけど、そこはやっぱり著者の丁寧さがその経験則を実直さに変えているし、それと、この著者自身も、当時なら当時の、治療法そのものをちゃんと改良させていこうという思慮深さもあって、これはこれで今読む価値もあるとは思った。

軽症うつ病 (講談社現代新書)

軽症うつ病 (講談社現代新書)