大崎善生 『聖の青春』

 将棋好きで読んでない人はいないってくらいの名著。A級在籍のまま29歳で亡くなった棋士村山聖の生涯を綴るルポルタージュ。幼少期からつきまとう腎臓の病魔、だからこその達観した哲学、だけど年相応の無邪気さと頑固さに負けず嫌いという沢山の人に愛された愛された人柄、それを支える師匠との師弟を超えた純粋な関係と、生前から村山と親交のあったこの著者が、情感たっぷりに人間の部分を描く。ちょうど最近、コンピュータ将棋とプロ棋士の対局として電王戦があって、それが「コンピュータの圧倒的な網羅性に立ち向かい、苦悩する人間」という構図(序盤よく分かんないし)で将棋を知らない人たち(俺とか)からも注目されたように、あるいは『3月のライオン』で少年の苦悩を盤に重ね合わせて語られるように(『3月のライオン』の二階堂は、この村山聖がモデルと言われてるわけだよね)。ある意味ではショウビジネスの消費の仕方なのかも知れないけれど。

聖の青春 (講談社文庫)

聖の青春 (講談社文庫)