森田季節 『ウタカイ』

 何年か前に同人誌に収められてたやつの続き。百合やら薔薇やら、同性愛を描いた文芸なり漫画なりを(生殖行為を伴わない意味で)耽美なんて呼んだりするわけだけど。百合姫というそれを専門に扱った雑誌に連載する小説として、更に題材は短歌によるエフェクト有の競い合い、これは雅なることこの上なく、ただ美しさを指向する作品かと思わせるがそうではなく、むしろその美しいだけの美しさを、耽美こそを否定するという、熱く、そして意欲的な一作。この作者ならではのメタ化する賢さがいい方に転がってて面白かった。

ウタカイ (Yuri‐Hime Novel)

ウタカイ (Yuri‐Hime Novel)