『希望の国』

 園子温監督の、原発事故を題材にした映画。福島の数年後にまた、架空の町である長島県で原発事故が起きた、という設定の物語。避難地域の内外、年齢などで、それまで一緒に暮らしていた人たちがバラバラにされるという、原発という明確な敵を持った純粋な怒り。そこにこっそり不吉な音(映画館で見ると音が大きいのであからさま過ぎてちょっとアレ)が忍び寄り、それから更に人々はその事故に、一時的なものでなく生き方のレベルで翻弄される。土地を捨てられずに避難命令に応じない老夫婦とか、いわゆる放射脳に陥る妊婦とか、描かれ方こそ極端であるもののそういう人はいたわけで、フィクションとして戯画化したもの、として距離を取って観ることの出来ないものを突き付けてくる。そしてそれらに破滅的なエンディングを迎えさせるところに、まあ作り手側の強い意識が見えて、まあ刺さる人には刺さる。その何もかもが無茶苦茶なエンディングを「愛があれば大丈夫」とかいうクソみたいな台詞で締めくくる、その投げやりな皮肉が示す、やり場のなくなってしまった憤りな。