アラン・シリトー 『長距離走者の孤独』

 WW2後すぐくらいのイギリスの、貧しい街の労働者たち、不良少年なんかを主人公にした短編集。翻訳なのでそれは掴みづらいけど、実際に作者もそんなところ出身で、方言バリバリの地に足のついた汚い言葉で率直に語られているらしくて、確かにその「目の前にあるものについて、自分の言葉で考えたことを喋ってるんだろうな」という雰囲気は伝わってくるだけの力がある。個人的には中でも、離婚した妻が週一で金を借りに来るという中年男性を主人公にした『漁船の絵』が好き。失った人にしか語れない、終わっちゃったものに対する感慨。

長距離走者の孤独 (新潮文庫)

長距離走者の孤独 (新潮文庫)