ラマチャンドラン 『脳の中の幽霊』

 幻肢の治療で有名なラマチャンドランが、自分の両親が偽物にしか見えなくなるカプグラ症候群とか、視界の左半分のことが意識の中に入らなくなる半側無視とかの不思議な症例について脳や神経の働きから説明していきながら、脳の進化や自己意識と身体の関係についても講じる著名な一作。何より面白いのが、こういう心の問題について、この著者がガンガン仮説を立てては、実際の患者に実験を施していく科学的なアプローチ。なんかもう、著者が「ふっしぎー!」から「こうなんじゃね?」から「なるほどねー!」ってなる様子が楽しそうなこと。有名な著者だからこそ集まってくる珍しい症例、その立てる仮説の鋭さ、ほんと、頭いい人って生きてるの楽しそうだな、って思うこと頻り。
 その内容も、極端な症例を取り上げながらも、最終的には脳が身体をどう認識してるかというところを、かなり明け透けに解き明かすので、自分の脳に手を突っ込まれてるような居心地の悪さと、その摩訶不思議っぷりの面白さというのが両立していて、かなり良い本でした。

脳のなかの幽霊 (角川文庫)

脳のなかの幽霊 (角川文庫)