谷崎潤一郎 『幼少時代』

 70歳くらいの谷崎潤一郎が、自分の持ってる一番古い記憶から小学校卒業くらいまでのことを、事細かに書いた本。なんか、遠出をした時に電車で乗り合わせた少女の美人だったこと、みたいなのが書いてある。特に、書いた時点で失われていた昔の江戸のことを書き残しておきたかったらしくて、その辺りの描写は微細にわたる。そんなに江戸を愛していた著者は既に京都に移り住んでいたわけだけど。
 あとまあ、なんか子供の頃の思い出の写真とかそういうのを尽く関東大震災の時に焼失してなくしちゃってるのが、なんというか。「そういうので大事にしてるものは切れちゃうんだなあ」っていうのはちょっとビビる。

幼少時代 (岩波文庫)

幼少時代 (岩波文庫)