下條信輔 『サブリミナル・インパクト』

 情動という言葉をキーワードに、無意識のところに潜んでいるものがどう現れてくるか、卑近な例を用いて認知心理学脳科学の結果から説明する本。ちょっと脳科学の部分の説明が足りないようには見えるけど、説明は小慣れてて飽きない。現代の情報の過剰さとそれに対するストレス、マスメディアの情報/感情操作、それに創造性とは何かなどと、わりと散漫な内容で、しかも科学者らしい正しい奥ゆかしさで「こういう実験でこういう結果が出ていて、こういう解釈が出来るかもしれないんだ」くらいの筆致に留めているので、わりと純粋にそういう潜在意識とかへの知的好奇心で読まないと「だからなんだ」ってなりそう。まあ、読んで「だからなんだ」ってなって内容を忘れても、その経験が潜在意識のところにスタックされてて、あとから役に立つこともあるかもね、ではあるけど。物理に役に立つといいんだけどさあ。あとまあ最近数年は、「(視聴者とかの)感情に配慮しなきゃいけない」から始まった、感情で動くことが正当化されてきてる流れもあって、それはちょっと危ないと思うんだけど(少なくとも利害対立した他人とすりあわせる時の共通言語にはなりっこないからな)なあ、とか。

サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代 (ちくま新書)

サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代 (ちくま新書)