ベルンド・ハインリッチ 『ブボがいた夏』

 生物学者が、たまたま野生から手に入れたアメリワシミミズクの雛と森の中で3回の夏を過ごす、観察日記。まず、自然学者だけあって周りの植物や動物の名前やら習性やらが分かってるだけあって、それを活かした風景描写は、分かってる人にはこういう風に見えてるんだ、という感じでわりと面白い。ただ、その生物への知識が、その一緒に暮らしているミミズク、ブボにはいまいち及んでいない、というか。明らかにブボへの愛着みたいのが色んなことに勝っちゃってるのね。例えば著者が自分の手で餌を与え過ぎちゃって狩りをあんまり覚えないとか、それが手遅れになってから冬場の処置に困って保護施設に預けようとしてみて失敗するとか、そもそもどうにも観察日記の観察眼が愛情に満ちすぎてるとか。そういうのを必死に学術的興味で覆い隠そうとしているんだけど、まあ、だだ漏れ。最終的には自然に帰って良かったね、ではあるんだけど。まあしかし、良くも悪くもないんだけど、一番大事にしたいものには学問ってたいして役に立たねえよなあ、と思った。

ブボがいた夏―アメリカワシミミズクと私 (ナチュラル・ヒストリー選書)

ブボがいた夏―アメリカワシミミズクと私 (ナチュラル・ヒストリー選書)