アーシュラ・K. ル=グウィン 『ゲド戦記』

 長編ファンタジー。オリジナルの言語や魔法が飛び交うファンタジーなのに、その筆致はすごく慎重で、バランス感覚をとても大事にしながら、ゆっくりと物語を積み重ねていく。それは世界観もそうで、魔法の無闇な使用を諌めるような魔法設定、単純な二項対立による善悪でない冒険譚、時代の洗練を実際に受けたような歴史設定、更にそれには、性差別や職業差別などの、近代的な確かにあった人間の悪い部分から目を逸らさず(真剣に考えてたら、そういうものが無いとおかしい、ってことになっちゃったと思うんだよね)、きちんと虐げられるものも書き切る強さがあって、爽快感はなくとも、落ち着いた、重厚なファンタジーになっている。個人の慎重な倫理観に基づく純粋な想像力の強度の為せる技、という感じで、かなり面白かった。

ゲド戦記 1 影との戦い (ソフトカバー版)

ゲド戦記 1 影との戦い (ソフトカバー版)

ゲド戦記 4 帰還 (ソフトカバー版)

ゲド戦記 4 帰還 (ソフトカバー版)

ゲド戦記 5 アースシーの風

ゲド戦記 5 アースシーの風

ゲド戦記別巻 ゲド戦記外伝 (ソフトカバー版)

ゲド戦記別巻 ゲド戦記外伝 (ソフトカバー版)