谷崎潤一郎 『美食倶楽部』

 大正時代、関西移住直前くらいの、幻想小説っぽいのを集めた短篇集。まあ、しょうもないっちゃしょうもない、みたいな作もあるんだけど、いずれにせよ、何か耽美とか芸術とかを窮めた結果に魔法、幻想へ踏み込んでいく、みたいな感覚があって、その窮め方は著者一流というところ。特に表題作の『美食倶楽部』では、至高の料理、もう料理と言うよりは、なんか口腔内から感覚を操作される"献立"が出てくるんだけど、更にそれを、献立の名前と、文章からの示唆で、読書から追体験するという構造への挑戦は、面白かったな。

美食倶楽部―谷崎潤一郎大正作品集 (ちくま文庫)

美食倶楽部―谷崎潤一郎大正作品集 (ちくま文庫)