伊藤計劃 『メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット』

 ゲーム『メタルギアソリッド4』のノベライズだけど、メタルギアを心底愛した伊藤計劃渾身の一作として、ゲームを知らなくても普通に読める。主人公のソリッドというキャラが、戦いの果てに迎えなくちゃいけない理不尽で残酷な死を予告されて、それでも最後まで死地へ赴くストーリー。この人の本を読むとどうしても、著者自身が早逝したということを踏まえて読んでしまいがちだけど、特にこの本は、終盤までをずっと貫く、戦いの見返りとしてはあんまりな死という運命に対する怒りと緊張感(語り部をソリッドでなく、その親友を持って来たあたり、ここがよく強調されている)がずっと続き、そして最後の数十ページに、蛇足にも見えるとってつけたような心安らかなエンディングが付いていて、それはたまらないものがある。ソリッドたちの物語を終わらせて、次の世代へ継がれていくための話なので、基本的には元のゲームシリーズの背景知識があった方がいいんだろうけど(前奏としての文脈を持っておくにこしたことはない)、ちゃんと設定の説明もあるし、何よりちゃんと面白いのが。