ジョージ・オーウェル 『一九八四年』

 1948年くらいに書かれて以降、全体主義批判の小説として読まれ続けてる小説。まあ教養というか文化背景の一部になってる一冊なんでしょうけど。単なる一小説の用語のはずなのにwikipediaに単独項目ができてたりとか、そういうレベルでの"文化背景"ね。で、中身は検閲とか監視社会の恐怖がひたすらに描かれている。言語を書き換え人間の思考を制限したり、家族というものを分解したりに始まり、一人の人間の嗜好も思想もみんな掌握され利用され、後半に至っては肉体的苦痛をさんざ描写した挙げ句、前半で暖めた精神の矜持を粉々にする徹底ぶり。現在、技術的にはこんなことも実際にはできるはずで、ここまで徹底したシステムでなくても局地的にこんなんなっちゃってる社会もあるかもということを考えるとなんとも。

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)