太宰治 『お伽草紙』

 中期、WW2中とかに書かれ、アッパーな方の太宰さんの最高傑作なんて評価されたりもする『お伽草紙』を含む短篇集。日本の昔話や中国の古典なんかを元にして、太宰一流の面白さにしている。そもそも太宰治の"おかしみ"がどこにくるかというと、ダウナーな方の太宰さんを適齢期を過ぎてから読んだ時にある、自分の中で勝手に一人でごちゃごちゃ悩んでうじうじしてる、どうしようもない感じ、ってのに対してくる戯画的な"苦笑い"なわけで、その特長を自覚して、『浦島太郎』だとか『舌切り雀』の主人公に、太宰があたかも「俺がこの主人公だったらどうしたろう」ってしたみたいな想像力を持ち込んでごちゃごちゃ喋らせると、これが本当に面白く、更にダウナーな方にも通ずる普遍的な生活の苦悩なんかもあって、まさに太宰治の文学作品。

お伽草紙 (新潮文庫)

お伽草紙 (新潮文庫)