アゴタ・クリストフ 『悪童日記』『ふたりの証拠』『第三の嘘』
2,30年くらい前にフランス語で出た、第二次世界大戦下のハンガリー(と言われている)のある街を舞台にした小説。3部作読み終わったあとの読み手としての率直な感想は「どうしろっていうんだよ」、かな。その3部作ってのが普通の意味の3部作じゃなくて、メタというか入れ子というか、2冊目は1冊目の『悪童日記』という本が書かれた世界で起きたお話で、3冊目は『悪童日記』と『ふたりの証拠』という本が書かれた世界でのお話で、という説明が合ってるのかどうかもわからないけど。ぼんやりとした有機感だけが3部作を紡いでいる。感情描写を排除して事実のみで淡々と語る語り口、それにこの不思議な構成が相まって、"正しい読み方"がどっかに示唆されてるわけでもなく、ただ"小説"としての圧倒的な存在感だけが。読んでる最中はそれなりに面白いけど、なんつうか、小説読みとしての技量を試されてるような、んー。単体で『悪童日記』だけで読むと普通に面白い(残酷だったり悲惨だったりする部分もあるんだけど、それをその奇妙なルールに従った淡々とした語り口で語ると変にユーモラスであったりする)戦争文学で、まあ普通に勧められるんだけど。
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