サン=テグジュペリ 『星の王子さま』

 有名な童話、という扱いになるんでしょうかね。大切な一冊としてこの本を挙げる人はたくさんいるけど、さすがそれだけの含意と雰囲気を持つ一作ですね。そりゃ勿論、これが童話の形を取った時代風刺だとか暗喩がどうこうとかいう解釈はあるんでしょうけど、まあそれはこの本の一番有名な言葉を使えば"いちばん大切なものは目には見えない"わけで、ってことはまあ、みんながみんなにとって同じ形である必要もないでしょうと思うわけです。含蓄があって大事な本なら大事な本なだけ、読んで受け取るものだけ受け取って行くしかないですよ、基本的に。例えば、権利関係のアレでこの本は数年前に続けざまに色んな新訳が出て、ある訳ではキツネを「飼いならす」と訳すし、ある訳では「手なずける」とか訳してるし、この本では「なじみになる」なんて訳している。で、俺はこれまでの人生の中で覚えた言葉を使ってそういった種のことを「共感の範囲の問題だよね」って呼ぶわけです。なんか、そういう感じの話かなって。

星の王子さま (ちくま文庫)

星の王子さま (ちくま文庫)