鶴見良行 『バナナと日本人』

 82年出版の名著。身近な食材であるバナナが、フィリピンのプランテーション農園で作られてるというのはよく知られていることだけど、それを可能としているいわゆる"安価な労働力"って何だ、というのを歴史的経緯を中心に見ていく。それは決して安易な第三世界との二項対立を煽るものではなく、その、フィリピンにも当たり前だけど存在する少数民族の話、フィリピン人の中で存在する下請け労働だとか、バナナを輸入する多国籍企業、そしてそれを食する日本人、とそれぞれにきちんと焦点を合わせて解説している点は、さすが時を超えて読み継がれる本なだけある。この辺の問題はほんとに難しくて、フェアトレードとかやったところでそりゃそう簡単に解決できる問題でもないんだけど、だからといって意識の外にやっていい話でもなくてだな、と。そういうのはフィリピンに限らないけど。

バナナと日本人―フィリピン農園と食卓のあいだ (岩波新書)

バナナと日本人―フィリピン農園と食卓のあいだ (岩波新書)