水木しげる 『水木しげるの妖怪文庫』

 妖怪の図鑑みたいな感じで、各妖怪について2Pの文章と、それと2P見開きで水木しげる大先生の絵が添えられているんだ。ま、びっくりすることにそれが1から4巻まで出てて、もちろん俺も全部持っているわけだけど。その、妖怪の解説も、ちゃんと出典文献が明記されていたり民話としての各地方ごとの伝わり方の違いが書いてあったり、「この絵、水木しげるっぽくねえな」って思って調べたら元ネタに浮世絵があってその模写だったりで、その図鑑という体裁をそれなりに繕ってはいるわけだ。まあだからっても、「そうか朝比奈和尚ってのはすげえな!(えー、朝比奈和尚は、雲の中から雷を鳴らしてお葬式の邪魔をする妖怪を、手を伸ばしてむんずと掴み雲の中から力任せに引き出し、命乞いをするその妖怪に『もう邪魔はしません』という証文に手形を押させたという人です。すごいね。)」とはならないわけですが。で、更にその図鑑としての冷静さみたいなところで、「たまには陽の光を入れた方がいいという訓話がこのような妖怪の形をとったのだろうか」とかそういう、"正体見たり枯れ尾花かと思いきやススキにぶら下がってる叔父さん"的なシニックな解説も入ってるんだけど、「いくらそこのメタを取り繕っても、そもそもこの本を手に取った時点で、ねえ」的なアレは消えない、というかそういう意味ではあんまり作者のスタンスがよくわからない。
 基本的にこの本を外に持っていって読むほどのロックンローラーはそういないでしょうから、妖怪の特長とか退治方法とか書いてあってもなかなか実用には至らないと思うんですよ。せめて電子辞書のカートリッジとかiPhoneのappとかにして、ポケモン図鑑みたいな使い方ができるようにした方がいいと思うんですよねー。