スタンダール 『赤と黒』

恋愛小説でありながら、1830年代以前のフランス貴族社会に対する批判も含んだ名作。まあ恋愛パートの方はフランスらしくねっとり細かく書いてあるわけですが、「ちっ……このマザコン野郎……マチルド一択だろ……」と主人公に苛立ちを覚えずにはいられません。レナード夫人の愛の無垢さが肯定される筋になってるわけですが、俺はそれが信用ならんのですな。その分だけ、中盤くらいのマチルドとの駆け引きは、ツンデレはデレてしまったら魅力半減、という格言に対する延命措置法の一つとしても面白いです。まあマチルドもロールプレイとしてなぞっているだけとも言えるのでしょうが、個人的にはそういう、自分に都合のいい物語を運命と信じて役柄になりきるという生き方がわりに好きなので。そこはジュリアンも貫き通して欲しかったところ。貴族批判の方はようわからん。コネとか不正とか腐ってんなとは思うけど。でもどんなシステムでも固定化したら腐るし。どうでもいい。

赤と黒(上) (新潮文庫)

赤と黒(上) (新潮文庫)

赤と黒(下) (新潮文庫)

赤と黒(下) (新潮文庫)