サイード 『オリエンタリズム』

誰だったかに、将来留学するなら読んどけって言われた記憶があるんだけど、誰だったかな。とにかく。「ヨーロッパ人」(この本読み終わったあとだと、こういうくくり方もどうかと思うようになりますな)が世界を「西洋」と「東洋」に分割して、結果的に植民地政策に至るまでの歴史的な流れを説明する本。引用してる書物にまるで心当たりのない門外漢からしてみればくどいくらいの重厚な説明なんだけど、そのシステムの圧力の一端は感じ取れたと思う。
まあでも難しい問題だよね。学問というのが他人と共通する普遍性を是とし積み重ねていくという性質を持つ以上、その以前の「流れ」を全く汲まないわけにはいかないし、それが外圧や権威に影響されたり利用されたりというのも多分どうしようもないことで、それはもう自分たちが自覚的であること以上の対策はできないんじゃないか。それか自分自身の世界観として内に秘めるに留めるか。特に人文系はなあ、歴史問題における学術的研究の意味とか、対象とすべくは一人一人の人間なのに、それを数/集合体として処理しようとすると途端に虚構になる、だけど現実的な説得力は保持してしまうというか。その虚構性の自覚だろうな、やっぱり。その点物理は「被害者」がいない分まあ気楽か。なるようにしかならん。傲慢と言えば傲慢な学問でもあるけれど。
オリエンタリズム 上 (平凡社ライブラリー)
オリエンタリズム下 (平凡社ライブラリー)