紫式部,谷崎潤一郎 『潤一郎訳源氏物語』

読みました。花散里が好きです。
いやあ、恥ずかしながら『源氏物語』自体が初読だったんだけど、すっげえ面白かった。日本の風景や昔の人の感情の動き方、言葉の使い方や和歌の響きなどを、原文のリズムや呼称を出来るだけ生かした谷崎訳で読めたというのは、本当に日本人で良かったと思う。もののあはれってやつですか。ストーリーよりもそういう書き込みを重視したような書き方、読まれ方をすることで、そういう自分の感覚的なものに対する原点というかアイデンティティを求めてしまうという、そういう役割はあるかな。だからこそ読み継がれてきたというか、偉大な作品だよね。もちろんストーリーも、若いころの源氏見ながら「結局手を出すんだ、とほほ」とか思ったり、栄華を誇る一方でやっぱり無常のものとして死ぬ人が死んだりという陰の部分も常にどこかの意識としてあったり、という面白さもあるんだけど。現代語訳なので通俗小説としても読めてしまって、しかもそれが面白いっていう、ねえ。
潤一郎訳源氏物語 巻1 (中公文庫 A 1-1)
潤一郎訳源氏物語 巻2 (中公文庫 A 1-2)
潤一郎訳源氏物語 巻3 (中公文庫 A 1-3)
潤一郎訳源氏物語 巻4 (中公文庫 A 1-4)
潤一郎訳源氏物語 巻5 (中公文庫 A 1-5)