羽生善治 『決断力』

全てを投げ打って何かに熱中してる人が日常の全てのことをその対象と結びつけて考えられたり、知らず何らかのアイディアのヒントにできたりする、というのはよくある話だけど、逆にいえばそういう人達の話ってのは日常の色んなことに応用が利くよね。そういう意味でこの棋士羽生善治が書いた本は、長考しながら1つの勝負を行ってそれが勝ち負けという結果となって返ってくる将棋というものを一旦手段として噛ませながら、決断力とか勝負、長い時間考えることについてのノウハウが書かれていてかなり射程範囲が広い。シビアに勝ち負けが決まる対局によって研ぎ澄まされた経験則、つまり勘の冴えがこの本のどの命題の細部にも行き渡っていて、「正しい」とか「勝ち」というものに価値(駄洒落だっ)を見出す人にはかなり実用的に読める本だと思う。個人的にも科学に対する態度に応用が利く部分が少なからずあったと思う。研究ということでは同じなわけだし。
決断力 (角川oneテーマ21)