メルヴィル 『白鯨』

19世紀アメリカの海洋小説。物語の本筋とは別に、クジラについての博物学捕鯨の実際の作業についての解説が半分くらいを占めているけどそんなに興味深くもないかなあ。19世紀のクジラの分類とか今から見たらあやふやなわけだし。それでもこの辺りのことを少しでも知っておかないと、何故欧米人はつい7,80年前までクジラを捕ってたのに今あんなに躍起になって捕鯨反対してんのかとかがわかりにくいんだろうと思う。

本筋の物語も出来事をそのままに、できるだけ中立となるよう配置された(人種や宗教的な、とかそういう意味でも。読者から見てという意味も強いけど)語り手の言葉で語られるような形で(結末を知った今から考えるとそれが有名な"Call me Ishmael."という言葉の哀しみでもあるんだろうな)、逆説的に抽象的な物語になっていて、いろんな解釈ができるんだと思う。というか、クジラって生き物がむしろ善の側にもおけるような書き方がされうるってのが面白いと思いませんか。
白鯨(上) (新潮文庫)
白鯨 (下) (新潮文庫 (メ-2-2))