ゲーデル 『不完全性定理』

原論文の翻訳もそこそこに、数学史的に見た数学基礎論、特にヒルベルト計画まわりの解説が大半を占める本。数学から切り離されて哲学的な武器として振り回されることの多いこの定理の解説として、文脈の中でのこの定理の意味を浮かび上がらせる試みというのはまあ正しいんだと思った。

でも実際の中身は正直全然わかんなかった。なんとなく雰囲気だけで読み通した感じ。そもそも数理論理学の素養がまるでなかったので、ゲーデル数によるコーディングとかの発想がなんだかとても新鮮。意味論とか形式化とか、数学の人特有のわけわかんなさが超炸裂してる。んーで感想としては、うーん、意外と不完全性定理の射程距離って短いんじゃないか? っていう感じ。いや、決して弱い定理ではないんだろうけど、粗方の人には実際問題関係ないんじゃね? と思う。この定理以降も数学は発展してるわけだしね。説得力という問題なのか信念の問題なのかわからないけど、完全性っていう言葉の意味問題のような気もするし。個人的にはあんまり興味がない、かな。他の科学とか数学とかの分野と同じレベルで、という意味で。まあでもこれが自分が前にどっかで言った(070914の米欄か?)、「分からない」ということを証明する努力は科学者として必要だ、という意味での重要性はたしかに感じる。科学的な態度をとる、選択する、という行為はかなりアクティブな意味を持つんだろうな、とか。

ゲーデル 不完全性定理 (岩波文庫)