加藤文元 『数学する精神』

代数学入門の授業でお馴染みのブンゲンせんせ。ちなみに昨日の授業の前半のお題目は「すんごい楽しい数は存在するか」だった。そんなすんごく楽しい教授が書いた、一般向けの本、というより好き勝手に思うところを書いた本、なのだと思う。

しかし数学を作り上げるのも人間である.確かに数学は美しい.それは数学に携わる人々をして「木の中に宿る」ような実在を感じせしめるほどの神的な整合性に満ちあふれている.しかし,いかに美しい音楽にも作曲者がいるように,数学もそれを創ったのは人間であるということ自体は疑いようのない事実である.そしてまさにこの「人間が創る」ということによって,芸術と同様に数学の世界も豊穣なものになっているのだと思う.

ここ、なんだよな。数学って。人間がいないと成立しない。その意味で不完全性定理は決して数学を疵つけるものではないし、人間が媒介するが故に数学的帰納法は無限回の応用へと踏み出せる。自然科学とすら一線を画す数学の強さ、美しさ、その人間味が詰まった本。

数学する精神―正しさの創造、美しさの発見 (中公新書 1912)