野村美月 『“文学少女”と慟哭の巡礼者』

ついに心葉がジャーンジャーンジャーンげぇっ、美羽!してしまうこの巻。無駄のない登場人物配置、最終巻に向かって収束していく物語。かなりよく練られてて俺は大好きだけど、2巻辺りの迷走っぷりというか荒削りな感じが好きな人にはどうだろう。
今回のネタ本は宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』。俺が持ってるのは新潮版。この版は他の短編も幾つか(『よだかの星』もあったはず)載ってるんだけど、最後のほうに掲載されてる『ビジタリアン大祭』も読むと、この本の最後の方に出てくる宮沢賢治のイメージに近いものが想像できるような気がする。人間くさいというのかな。俺は大嫌いだけどね、『ビジタリアン大祭』。あとは途中で遠子先輩も触れる谷崎潤一郎春琴抄』も読んでおくと尚よいかと。

感想。まず。ななせはまだ死んでいなかった! いったんデレた後には最早ただ腐敗していくようなただのツンデレじゃねえ! 中盤のこの報われなさっぷりっ! ホワルバも真っ青なガチンコファイト! 心葉の苦しみも、さすがに1巻から張られてきた伏線というか呪いなので存分にお苦しみいただいとります。理解は出来るんだけどなんだかやきもき。美羽も終盤までかなりいい感じに病んでますが、他の登場人物もですが最後にダークサイドに落ちずに際で残るので(何らしのなく頃にだよと思った)、物語的には救いといえばそうなんだけどヤンデレとは言い難い一線がありますねえ。こうなるとやはりラスボスである遠子先輩をやるっぽい続刊に期待。これまでは俯瞰者視点で、読者的にもそういうルールで書かれてる人だと思ってたのをどう舞台に引きずり上げるかですねえ。

“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫)