青年団 『冒険王』『新・冒険王』

 1980年、イスタンブールの安宿に集う日本人バックパッカーを描く『冒険王』、場所を同じくして時を2002年の日韓ワールドカップの韓国イタリア戦の日にして日本人と韓国人を描いた『新・冒険王』。
 『冒険王』の方の小杉というキャラクターの、日本から遠ざかることでの後ろめたさというか、逃げてるという自覚というか、それが周りの人の行動によってちょっとずつ自分の中に塵が積もっていくこと、それに対して結局自分が遠くに行くことで解決ではない解決にしてしまえというある種の投げやりの感情がすげえよく伝わってきて良かった。このキャラ、終盤に詩の一節を朗読するんだけど、その詩の朗読の仕方の演出意図、まあ特に平田オリザ自然言語云々の関係もあって気になって、公演後のアフタートークに出てきた平田オリザ本人に演出意図を訊いてしまった。あんまり細かく指示してはいなかったみたいだけど。
 『新・冒険王』の方は、日本と韓国という対比を使ってお互いの特徴を際立たせて、特にコミックリリーフを入れまくって浮かばせるの面白いし、そうやって鏡にできるということ、他山の石でもいいし青い芝でもいいんだけど、そういう対象にできる2国間関係という存在があること、色々問題はあるけど、別に戦争してるわけではない程度の隣国があること自体の有り難さに気がつく一作なんだけど、平田オリザお得意の同時に会話劇を進行させるやつ、あれを日本語と韓国語を混ぜてやるんだけど、それ韓国語の方は字幕でどうしてもそっちに引っ張られちゃうので、ほんとに細かいとこ把握するの大変だった。これはうちの研究所に来てるどっちの言語も分かる留学生2人連れてきたかったなあ。こっちは平田オリザより若い世代の話なので、結末をあんまり沈めずというか、わりと前向きな問いかけに聞こえる形だったんだと思うけどなあ。