石垣島最終日

 朝8時くらいに荷物をまとめて、フェリーターミナルの観光会社に行きます。今日は夕方くらいまで、この石垣島と、あと隣の竹富島っていう島の観光ツアーに申し込んであるのだ。そのツアーの受付では何種類かのマップと何枚か綴りのチケットを渡されて、午前中の石垣島バスツアーの受付場所と時間、午後に竹富島に渡るときの時間とフェリーの乗り場、渡ってからどこにいる人に話しかけるかと、あとここに荷物を預けるけどそれを受け取る最終時間を一気に口頭で教わります。チケットはバスツアーのチケットとフェリーの往路のチケットと竹富島での観光に使うチケットとフェリーの帰路のチケットらしい。うーん……。このおつかいJRPG感……。困ったらここに戻ってきて話を訊きにくればよい感……。コンビニで朝飯を買って食ってから、近くのバスターミナルに行ってバスツアーのチケットを交換します。このバスツアー自体はわりとポピュラーなツアーなんだろうね、フェリーターミナルの目の前にあるバスターミナルの外観にでっかく告知が(かなり昔から定着してそうなフォントで)貼ってあるし。バス乗り場には、まあツアーとか好きそうだなっていう年齢の夫婦ばっかりが待っている。全部で40人くらいかな。
 えー、結構ええ声したオッサンのバスガイドが、何百回繰り返したんだろうなっていう定番のギャグを交えながら軽快に島を時計回りに一周していく。あんまなんも覚えてないな……。川平湾っていう海の綺麗なところがあって、そこをグラスボート、川底がガラスになっている小さな船ね、これに乗って漕ぎ出すと、潜らずにシュノーケリングみたいに魚の泳いでる様子やでかいシャコ貝や珊瑚が見れる。うーむ、ちょっとダイビングしてみたくなってはいるかな。この季節はいうほど海がエメラルドブルーになったりするわけではない。その後に飯食ったか、石垣牛のハンバーグだっけ、あんま石垣牛だからどうのってのはねえな。そうそう、西表島オオタニワタリっていう野草を見て、まあこれが着生植物(岩とかの上からでも全然生きてける)の1つで、なんか全体的にお椀型みたいに茎や葉を広げて、そこに溜まった他の植物の落ち葉から栄養をとったりするやつなんだけど(ほんとに着生植物を詳しく解説されたんだな)(というかちゃんと気にしてみてみると、石垣島のあらゆるところに生えてる)、その新芽はやわらかくて食べられるんですよ、とかいうのを聞いてたんだけど、この日の昼飯にその新芽が島名物の1つとして出てきた。特段味はしなかったが……。
 珍しい椰子の原生林とか、玉取崎展望台とか、一応行くんだけど、まあそんなもんかって感じ。綺麗だとは思うんだけど、これよりもう一段階綺麗な夏があることを何度も強調されて「次は機会がありましたら是非夏に!」を何度も言われると、写真撮る気も失せる。バスガイドがちょくちょく、三線を引いて八重山民謡を教えてくれるんだけど、これはバスガイドがバスガイドになってから自主的に覚えたのか、そもそもこういう三線の新人コンクールみたいなとこに求人が行くのか、こういうの練習すると手当が出たりすんのかとかが気になってあんまり覚えていない。というか、安里屋ユンタとかいう歌、わりと周りの老夫婦とかも知ってるスタンダードナンバーみたいな感じで扱われてたけど、そんな有名な曲? っていうか前に本島の方に行った時も思ったけど、みんな普通に、自分の故郷と関係ないとこの民謡とか好き好んで聴いたりするものなの? 全然知らんわ……。祖母の住んでる北海道岩見沢市で行われている祭り、百餅祭りのテーマソングの「一〜口〜食べ〜れば〜百〜年〜長〜生き〜」みたいな曲しか知らんわ。
 島をぐるっと一周してまたフェリーターミナルに戻ってから、今度は竹富島へ。これはフェリーで10分くらい。15時くらいに着いたら、港になんか浅黒く日焼けしてグラサンの怖そうなオッサンが「cmizunaさま」って書かれたボードを持っている。「え……あの……なんちゃら観光の方ですか……」「あ、cmizunaさん? じゃああの車乗って」つって、車に乗らされる。ビビる暇もなく、なんか如何にも昔の景観を保つように粗い石垣と低い赤瓦の屋根で統一された集落に入り、なんか水牛車の着いてる広場みたいなところに連れてかれて、30分くらい待たされてから、その水牛車に引かれてその辺の集落を一回りするのである。そこでも牛ガイド(牛のケツをぴしゃぴしゃ叩いたりクソの世話をしたりする)がガイドの合間に三線を出して安里屋ユンタを歌ってくれたりする。コーナーリングでその石垣を引っかけそうになるのが楽しい。牛ガイド(バスガイドのコンパチみたいな感じで書いてるけど正しくない気がする)が無造作にぴしゃぴしゃ水牛のケツを叩いてるのが楽しい。石垣は積んでるだけなので訓練中には実際引っかけて崩したりしたらしい。景観保たれてるしかなりのんびりした島(お勧めの移動手段はレンタサイクルらしい)だったので、わりと気楽である。それが終わったのが16時前ですか、帰りのフェリーの最終が17:40で、そこに送迎してもらおうとするとそこに17:10に集まりましょう、というか送迎の予約を入れましょう、とのことなんだよね。それまでの時間に2本くらい送迎バスは出るんだけど。そんで、俺は予め調べてあった観光ガイドで行ってみたいとこが一箇所、喜宝院蒐集館っていう民俗学的な資料を集めてるとこがあるらしくて、そこに行ってみたいっていうので、一応送迎バスは最終の時間を予約しておきました。かなり楽しみにしてたんだけど、行ってみたらあっさり改修中で休館しててさ。もう……。近くに祭りで使われてる広場とかあって、それも実際に見てみたら、なんかコンクリで固めたとこもある普通の場所に祭りのときに使う小屋がある、みたいな感じで、普段は別に何もないんだよね。周りに他に幾つか御嶽はあって、もう観光客向けの案内板もないけど地元民からのお供えは欠かされてないとかいうのはあって、そこの手つかずさみたいのは結構嫌いではない。それから牛車のガイドで「時間があったら是非行って見て下さいね」って言われてた竹富民芸館っていうとこがあって。なんかこの島の伝統織に五四っていう柄があって、これは「いつの世までも」っていって、戦地に赴く男へ女が織って贈ったとかいう話なんだけど。それを今でも織っているのが見られるらしいっていうので、お勧めがあったのね。行ってみたら、特に見るとこはなかった。織ってるオバサンとかはいるんだけど、普通にラジオ聴きながら一心に織ってるから、じろじろ見る感じじゃないし、展示もほぼないしミンサー織を売っているわけでもない。なんか、数年前に知り合いの女の子がこの島に旅行に来たことがあって、そのときにお土産に箸置きかなんかをもらったんだけど、なんかこの五四柄とかいう女の子が贈るのにうってつけのお土産があるのにそれを選ばなかった辺り、妙に警戒心を抱かれていたんだな、っていうのを再確認している。それだけの場所だった。それだけ見たら、もう他に行って楽しそうなところはないんだよね。30分で見終わっちゃったよ。しょうがねえから送迎バスをキャンセルして、歩いてフェリー乗り場まで行きました。全然間に合う。近くの観光センターみたいなところに寄って見学しても間に合う。ここら辺でトイレに行ったら、なんかそこの鏡を見て気がついたんだけど、数日前からの日焼けで顔の皮がむけ始めていて、顔面中がなんか白くひび割れているみたいになって、ちょう気持ち悪い。自分で「こわっ!」って思った。17時のフェリーで石垣島に戻って、そのままバスに乗って空港へ。
 空港で飯食ってお土産買い足して、地ビール飲んで20:30まで時間潰してから飛行機に乗って関空に飛びます。寒いね。こんな寒いとこで、なんで俺は顔面がひび割れてるんだろうと思うよね。結果的にこれは、数日後に学校に行ったら、「顔が赤いけどまさか2月で日焼けしてると思わなかったので、一杯引っかけてきてから学校きたのかと思いました」とか言われている。まあ無職力の高い旅行だったな。