『名もなく貧しく美しく』

 戦後間もなくのもののない時代に、聴覚障害のある2人が出会って結婚して、苦労しながら子育てをする話。まあ貧しくて、次々と不幸なことが起きてもじっと耐えて助け合って真面目に生きる2人が描かれる。しかし嫁役の高峰秀子、やや童顔なことと、この役の聴覚障害のせいで喋り方がやや幼く聞こえることとで、どうにもなんだか甘っちょろい感じに見えてしまうのが謎。他の人が生活に困窮してるのに亀やら捨て子やらを拾ってくるところとか、こういう、弱い人が更に弱いものを探してきて無自覚に自己憐憫の代償にすんの、その無自覚性がすごい嫌だなあと思った。母親の反対を押し切って子供を産んでは1人死なせて(寝てる間に赤ん坊の悲鳴を夫婦共に聞こえないで死なせる)、それでも更にもう1人産んだりするとことかつらい。そんでそっからも、出来損ないの弟に金を毟り取られたり不幸なことが起き続けるんだけど、なんかそこにサディスティックな気持ちが全く湧いてこないかって言うとよく分かんないような気がした。