Yatagarasu 『古色迷宮輪舞曲』

 紅茶の淹れ方を間違えるとゲームオーバーになって進めないエロゲとして有名な一作。なんちゃって、まあエロゲの一大ジャンルであるところのループもののシナリオ重視なエロゲ。多世界解釈いえーい。その謎解きの部分と不可分なのが、その紅茶地獄を産み出すシステム部分で。読み進めたテキストの中から蒐集されるキーワード集の中から、時折求められるタイミングで適切なやつを選ぶことで選択肢に代える。下手なのを選ぶと、各ヒロインごとに設定されている運命量ってのが減って、それがなくなるとそいつ死ぬ。まあ死ぬのは別にいいとして、ストーリーが戻されるんだ。で、わりと序盤にチュートリアル代わりに入れられる紅茶のところの選択肢のあたりが実は運命量管理が面倒で、ちゃんとやらないと紅茶を淹れては誰かが死んで戻されて紅茶を淹れるの地獄化するのだ。というか実際はこれ、上手く選択肢を選んでシナリオ進めていくゲームじゃなくて、死んで覚えるゲームだってことに気付いたときから難易度めっちゃ下がるけどね。実はこのシステム自体が終盤のシナリオ展開に利いてきて、まあここでメタに飛ばすのは凝ったゲームならわりとあることだけど、やっぱ「上手くできてんなあ……」って思う。紅茶と童話っていう2つのキーアイテムの相性で雰囲気(童話的な筋の通った理不尽さ大好きマン)も貫かれてる。ループを自覚してから意図的にループしながら求めていくものも、マクガフィン的にならずに各段階で展開していくので中弛みもないし、ループもの一番の見せ場である、周回してるうちに募る切なさを振り切った最終盤の疾走感も生きてる。そしてやはりループものエロゲのセックスは存在のセックス、魂のセックスであるな、エロくはないが「いよっ! 実在の懸かったセックス!」って思う。